【建築士】2019年8月号「まちに入る」


第一回目(前号)にて、建物の設計行為が単体で終わってしまいがちであり、次なるフェーズを考えていることを述べた。考え抜いて設計させていただいた建物や在り方 をどう地域に広げていくか、自問自答してみた。

これまでいろいろな場所で設計をしてきているが、どこかで「自分ゴト」になりきれていなかったのではないか、との問いが出てきた。もちろん、お施主様の思いや、その場所の地域特性を考え抜いて設計してきているし、今後も変わらない。たとえば、自分が住んでいる足元の地 域については、どうも接点が気薄であったコトに気がついた。自分の足元であれば、より「自分ゴト」になるのではないか、まずは地域を知ってみよう、街に出てみようと 思い立った時、地元三鷹市の広報にて「まち活塾」という半年間の公開講座があることを知り、参加してみることにした。

この「まち活塾」は三鷹市内において、自分ができるコト、やりたいコトなどを三鷹市のためにコトコト交換のようなことを誘発するような講座であった。職種や経歴など多様な参加者が集まり、2週に一度のワークショップを半年繰り返し、最後にはなんとも言えない連帯感が生 まれていた。最後の発表では、建物を箱から出すように、 既存ブロック塀を除去して、生垣ではなく、いくつかの果 樹や落葉樹の植栽を行いましょう! という提案を行った。 倒壊の危険除去や、街の熱容量を減らし街が涼しくなる、という意味も込めた。さらには、必然的に地域の会話が 増えるように向こう三軒両隣方式として、1軒だけではなく、最低3軒が協力して取り組むこと、というシカケも提示した。

その後、話を聞いてほしいというきっかけをいただき、自宅すぐ近くの空家のブロック塀を撤去して緑化するプロジェクトに関わることになった。このプロジェクトは一つの空き家を地域 に開く! というモノで 、ブロック塀だけでなく、建築再生の仕組みづくりをも担うことに発展している。今回の空家の利活用をプロトタイプとして考えつつ、点から面へ広がるような既存建築ストック利活用の在り方も視野に入れたプロジェクトになりつつある。