【建築士】2019年7月号「まちに出る」


3回連載の初回は、これまで歩んできた大きな流れを振り返りつつ2回目へつなげてみたい。

大学在学中は、都市計画事務所にてアルバイトをし、大規模団地開発やスーパー堤防計画等に関わり、大きなスケール感の仕事を学んだ。卒業後は、十勝のランドスケープ設計事務所にて、大小さまざまな公園の計画に携わった。ここでは、机上で設計する前に、敷地でキャンプを行い夜や朝を体感したり、市民の方々と先行利用ワークショップを行い、敷地を実際に利用することでポテンシャ ルを身体で理解していった。まずは実行したり、ワークショップを通じて実の使い手の方々の生の声を聞く大切さを学んだ。その後現在の建築設計事務所に在籍し、多様な 設計活動をしてきている。

都市計画 →ランドスケープ→建築、とスケールは小さくなってはいるし、世の中的にはそれぞれが専門職となっていると思われるが、自分の中では一貫していて、どんな物事を考える時でも大きく俯瞰したり、細部に入り込んだりというスケール感を大切にしたいと思っている。

建築の仕事は、建物単体の設計が一般的である。新築住宅であれば、まずはお施主様のご要望が第一である。それでも俯瞰した目線で街並みや街そのものを意識して、この敷地にはどんな建物が相応しいのかを考えつつ設計を行い提案をしてきている。とある角地住宅の新築設計に おいては、ブロック塀に囲まれていた敷地のブロック塀をすべて撤去して街に開き、枕木土留ベンチを外構でつくり、既存樹木のウメとキンカンを残した。お施主様はもとより、近隣の方々からも喜んでいただいた。この場所のつくり方としてベストだと思えたし、このような風景に感化されて、近隣の方々も追従してくれれば、閉じた街の風景も一変し て開いた緑豊かな風景になる! という思いであった。  

しかし、やはりそれは設計者の考えなだけであって、街の風景が変わるには至っていない。考えはよくても設計者の独りよがりなだけなのだな、街の風景をホントによくするにはどうしたらいいのか......等を考え、実際に自ら街に出て行動してみるコトにした。